2021年アメリカを支配するXとは

こんにちは

突然ですが、皆さん2021年がなんの年かご存じですか？

…

はい。その通りです。ジュウシチネンゼミの年次集団Xが発生する年ですね。ですね？

(以下、虫写真注意)

ジュウシチネンゼミとはアメリカに生息するその名の通り17年間生きるセミです。昆虫にしてはなかなかの長寿ですが、その生涯の大半を土の中で幼虫として過ごすため我々人間が彼らを目にすることができるのは羽化後の成虫期間わずか数週間に留まります。「17年間のうち数週間しか観察のチャンスがない」と聞くとどこか貴重でありがたいことのようにも聞こえますが、実はこのセミ、おびただしい数の個体で群れを成し大量発生するため、17年に1度起こる災害とでも表現する方が妥当と言えます…。

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↑ジュウシチネンゼミの一種

同様にジュウシチネンゼミの仲間は17年もしくは13年の周期で大量発生するため、「周期ゼミ」あるいはその周期年数から「素数ゼミ」などと総称されます。生息域のうちある1つの地域にのみ着目した場合、17年(あるいは13年)で2度以上発生することはありませんが、生息域全体を見渡せばほぼ毎年どこかしらの地域でその姿を見ることができるようです。

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↑大量発生した周期ゼミ(拡大時やや閲覧注意)

そろそろタイトル回収に向かいます。周期ゼミはその発生年数ごとに世代わけがなされ、これを年次集団(brood)と呼びます。理論上、17年型の種には17の年次集団が、13年型の種には13の年次集団が存在し得ますが、実際には前者には12、後者には3しか存在しません。年次集団には17年型にI ～ XVII(1～17)、13年型にXVIII～XXX(18～30)の通し番号が振られており、そのうちXとXIXは各種における最大規模の年次集団と言われています。そのXが発生するのが今年2021年というわけです。

以上、釣りタイトルを回収するための教科書パート約600字。ブログはレポートを100字書き進める労力で500字書けるから楽でいい。ところでカテゴリは「諸学」でいいのだろうか…。

周期ゼミ、魅力的じゃないですか？生物の進化に驚かされることは多いですがその中でもかなりインパクトある生き物だと思ってます。17や13という周期年数はなんでも天敵や他の種のセミの周期年数と極力同期せぬようにと進化の過程で辿り着いた数字らしい。確かに20年周期にしちゃうと2・4・5・10・20年周期の天敵と毎回毎回鉢合わせちゃうもんね。他種ゼミとの同期を避けるのには雑種の発生を抑える狙いがあるとか。いずれにしてもセミが文字通りDNAレベルの天才で出来損ないホモサピエンスのわたしくとてもつらい。

「17年や13年の種以外にも10年や12年などといった非素数年周期の種も存在したが、先述した理由から競争に不利が生じたため淘汰される。その結果17や13といった素数年周期の種のみが「周期ゼミ」として生き残った。」というなんとも説得力のある説もあるようですが、アカデミックな場に身を置いていない者としてはロマン性を考慮して都合よくスルーさせていただきます。吉村仁先生すみません…

虫の進化と言えば、蛾のそれには何度も驚かされた。セミがDNAレベルで数学者だとしたら蛾はDNAレベルで芸術家だと思ってる。虫が苦手な人にもぜひ直視してほしい3枚の蛾の写真でお別れしたいと思います。

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